犬アジソン病とは?フロリネフが最強の治療薬【副腎皮質機能低下症】

副腎皮質機能低下症とも呼ばれるアジソン病は、イギリスの医師トーマス・アジソンにより発見された病気で、人では食欲低下や体重減少、皮膚および粘膜に黒い色素沈着などの症状が現れます。

犬のアジソン病では他の病気との区別がつきにくく、アジソン病という病名がついた頃には症状が悪化している事も少なくありません。最悪の場合、命を落とす可能性もある病気ですので早期発見が大切になります。

若年から壮年の雌犬に多く発生する傾向にあり、日本での好発犬種は特に報告されていません。

名前の通り副腎皮質の機能が低下することにより起こる病気で、一度発症すると完治することはなく、薬を服用して病気と上手く付き合っていく必要があります。

副腎とは?

副腎とは腎臓の手前に位置する小さな器官です。
左右の腎臓にそれぞれあり、小さい器官ながらに重要な役割を果たしています。
副腎は「皮質と「髄質」から形成されており、それぞれ数種類のホルモンと神経伝達物質を産生・分泌しています。

副腎皮質って何?

副腎皮質は外側から球状帯・束状帯・網状帯の三層で形成されており、それぞれ異なったホルモンを産生・分泌しています。

これらのホルモンは肝臓で合成されたコレステロールから産生されており、ステロイドホルモンといいます。

球状帯で産生・分泌されるホルモンは「電解質コルチコイド」と呼ばれ、束状帯と一部の網状帯で産生・分泌されるホルモンは「糖質コルチコイド」と呼ばれます。

アレルギーの薬として知られている「ステロイド剤」はほとんどが糖質コルチコイドの事を指します。

アジソン病の症状

アジソン病の症状には、以下のようなものがあります。

  • 嗜眠
  • 食欲不振
  • 嘔吐
  • 衰弱
  • 下痢
  • 体重減少
  • 多飲多尿
  • 沈鬱
  • 脱水
  • 虚脱
  • 低体温
  • 黒色便
  • 徐脈
  • 低血糖

アジソン病の症状は、他の病気でも発症しやすい症状ばかりです。

アジソン病は発生件数が少ない病気ですので、これらの症状イコールアジソン病にはなりにくく、様々な病名を転々とする事もあります。症状が曖昧で多様性がある事で、重症になるまで飼い主が病気に気づかない場合もあります。

副腎皮質は代謝機能に大きく関わりがあるため、初期に現れる症状としては体温の低下があげられます。体温が低下するために元気がなくなり、次第に食欲不振・嘔吐・下痢などの症状を発症していきます。この状態で病院に行くと触診のみの判断で、胃腸炎などの消化器系の病気が疑われる事が多いようです。

多飲多尿、体重減少、脱水、食欲不振などの症状が現れることで、血液検査を行うようになります。そこで低ナトリウム・高カリウムの電解質異常が発見される事で、アジソン病を疑い、ACTH刺激試験を行い確定に至ります。

アジソン病の症状はゆっくりと進行して行くために、症状がよくなったり悪化したりをくり返します。症状が安定しないのもアジソン病の特徴と言えます。

また初期の段階では、ストレスを感じた時のみに症状が発生する場合もあります。それほどまでにストレスとも大きく関わりのある病気で、ストレスを過度に感じると一気に病状が進行する事もあります。

アジソン病の検査方法

アジソン病と特定をするには、臨床病理検査(血液検査など)、心電図検査、画像診断、ACTH刺激試験で診断を行います。病名の確定を行うには、ACTH刺激試験が必須になります。

臨床病理検査

血液検査で最も重要になるのが、電解質測定です。
アジソン病の90%が電解質異常を認め、残りの10%では電解質異常が認められません。
電解質異常が認められる90%のうち、80%が低ナトリウム・高カリウムの両方、10%がいずれか片方の異常が見られます。

ACTH刺激試験

ACTHとは副腎皮質刺激ホルモンといい、副腎皮質にホルモンを分泌するように指示をだすホルモンです。副腎皮質はこのACTHの命令により、コルチゾールやアルドステロンの分泌を行います。

ACTH刺激試験では、最初に採血を行い、その後ACTHの製剤を注射する事で副腎皮質がホルモンを分泌するように仕向けます。

注射1~2時間後に再度採血を行い、初回の採血結果に比べてコルチゾール濃度がどのように変化したのかを調べます。初回より注射後の数値のほうが高い場合が正常ですが、アジソン病ではコルチゾール濃度が正常より低くなります。

アジソン病の原因

アジソン病は、副腎皮質ホルモンの分泌量が低下する事で起きる病気です。

低下する原因としては、副腎皮質そのものが破壊もしくは、萎縮して発症する場合(原発性)、他の器官の異常により二次的に発症する場合(続発性)とにわけられます。

薬の投薬(ステロイド剤・ミトタン・トリロスタンなど)や副腎摘出などが原因で起こる場合(医原性)もあります。

原発性

副腎皮質が破壊される原因には、自己免疫疾患や感染症、悪性腫瘍などがあります。

続発性

続発性は、副腎に命令を出す器官の異常により起こる場合を指します。
副腎に命令を出す器官としては、下垂体・視底下部などがあげられます。

下垂体や視底下部が炎症・創傷・腫瘍などにより機能が停止することにより、分泌するACTHが低下することで発生します。
ACTHは副腎皮質ホルモンの分泌を促す役割があり、この刺激ホルモンが分泌されないために発症します。

医原性

アジソン病の反対の病気であるクッシング症候群(副腎皮質機能亢進症)の治療薬はホルモン分泌を抑制する働きがあります。
薬の量を間違えれば、副腎が破壊されアジソン病になります。

アジソン病と診断された時に気をつける事

アジソン病と診断された場合には、ストレスに注意する必要があります。
ストレスがかかると体内の糖質コルチコイドの要求量が増え、コルチゾール不足により臨床症状が顕著に現れやすくなります。

この場合は獣医師の指示の元、薬量を普段より増やす等の対処を行います。
またストレスを受けると急性腎不全の可能性も高まり、急性腎不全に罹患すると一気にホルモンが不足します。死に至る事もありますので注意が必要になります。

アジソン病の治療方法について

アジソン病の治療は急性の場合、低血圧・循環血流量減少・高カリウム血症・低血糖・代謝性アシドーシスの改善を目標に、静脈内点滴・インスリンやカルシウム製剤、グルコースの投与、重炭酸塩の投与を実施します。

その後は不足しているホルモンの補充を行います。

食事療法

アジソン病は食事療法の必要はありませんが、低ナトリウム血症では塩分の摂取、高カリウム血症ではカリウム摂取の削減、低血糖では高エネルギー高糖質食の摂取、食欲不振では食事形態の工夫など必要に応じて対応すると良いでしょう。

治療薬

アジソン病はアルドステロンとコルチゾールの2種類もしくは片方だけが不足して起こります。

急性の状態を脱したら維持として、不足しているホルモンを補う薬を投与します。

不足しているホルモンによって投与する薬が変わり、アルドステロンが不足している場合には「フロリネフ」、コルチゾールが不足している場合には「プレドニゾロン」が有名です。

アジソン病の治療薬の種類

アジソン病の維持治療の薬には、フロリネフ、コートリル、DOCP、プレドニゾロンなどが挙げられます。

フロリネフ

フロリネフはアルドステロンの作用が強く、コルチゾールの作用が弱い傾向にあります。
アルドステロンが不足する場合に主に使われます。小型犬に主に処方されます。

コートリル

コートリルは、アルドステロン・コルチゾールの両方の作用が同等程度にあります。
アルドステロン・コルチゾールが両方不足する場合に主に使われます。

DOCP

DOCPは、アルドステロンの作用が強くコルチゾールの作用はありません。
アルドステロンが不足する場合に主に使われ、フロリネフとは違い大型犬(25kg以上)など体重の重い犬に主に処方されます。
コルチゾールの作用が全くないため、コルチゾールも不足している場合はプレドニゾロンの投与が必要です。

プレドニゾロン

プレドニゾロンはコルチゾールの作用が強く、アルドステロンの作用は弱い傾向にあります。
コルチゾールが不足する場合に主に使われます。

アジソン病の治療ならフロリネフが最適

フロリネフ
アジソン病の投与薬で一番有名なのがフロリネフです。

フロリネフは塩類代謝作用が強い傾向にあるため、体内の塩分量を増やし血圧を上げる性質があります。1日の容量は2.5~5kgで1錠が目安となっていますが、治療の経過や体重により使用量が違いますので獣医師の指示に従ってください。

副作用には、不眠・消化不良・食欲増進・むくみ・血圧上昇・体重増加などが報告されています。

まとめ

アジソン病は、発症すると一生病気と付き合っていく必要があります。

薬の投与は不足ホルモンを補っているだけであり、ホルモンが分泌できるように治療しているわけではありません。症状がなくなったから薬の投与を中止できる病気ではなく、投与を止めてしまうと症状が再度現れるようになります。

薬は値段が高い上に毎日適量投与する必要があり、治療費もかかります。しかし、薬でホルモンを補うことで元気で生活することができます。

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