猫の乳腺腫瘍はガンの中でも特に悪性の可能性が高いです。
猫の乳腺腫瘍はメスに発症することが多く、オス猫はめったにこの病気にかかりません。
乳腺にできる腫瘍全般のことを指しますが、その80%以上が悪性腫瘍(ガン)です。
高齢のメス猫に多く見られ、残念ながら予後が悪く命にかかわるケースも多々あります。
乳腺の悪性腫瘍は進行が早く、付近の臓器やリンパ節、骨などへの転移も頻繁に見られます。
腫瘍が大きくなるとコブのように膨らんで歩行が困難になったり、腫瘍が裂けて中から膿が出てくることもあり、普段の生活にも大きな支障が出るようになってしまいます。
猫の乳腺腫瘍治療法は?
腫瘍が見つかりそれが悪性であると診断結果が出た場合は、基本的には手術で除去することになります。
転移や再発のリスクを出来る限り減らすために、左右両側の乳首(合計8つ)とリンパ節を全て取り除く場合が多いです。
しかし、残念ながらそれでも60~80%の高確率で再発が認められます。
高齢、もしくは他の疾患があり手術に耐えられない場合や、手術を望まない場合にはインターフェロンの注射や漢方薬、抗生物質などの薬で腫瘍を小さくしたり、炎症や痛みを抑える治療を行うこともあります。
抗ガン剤治療に関しては、獣医さんの中でも効果の有無について賛否両論があるようです。
猫の乳腺腫瘍は早期発見が何よりも大切!
知り合いの10歳のメス猫さんが、乳腺腫瘍にかかりました。
ある日猫のお腹を触っていたらコリコリと小さく硬いものに触れたそうです。
その人は猫の乳腺腫瘍についての知識があったので、その日のうちに即、動物病院で受診したとのこと。
この迅速な対応が功を奏し、幸いにもまだ腫瘍がかなり小さい段階での発見と手術ができました。
その後は少し痩せてしまったけれど、今のところ再発もなく以前とほぼ同じ生活ができているそうです。この病気は、早期発見が何よりも大切です。
そのためには、日頃から猫の胸やお腹の部分を、毛をかき分けて両手で触って観察することが大事です。猫が小さい時から、正常な時の乳首の大きさや位置や周りの皮膚の感触をしっかり覚えておきましょう。
うちにも13歳になるメス猫がいるので、毎日、背中をなでるのと同時にお腹側もくまなく触るようにしています。猫がゴロンと寝転がってリラックスしている時に、コミュニケーションも兼ねて触ってあげてください。
お腹を触ってみて、もしも、
- コリコリした、硬いしこりがある
- ムニムニした、柔らかいしこりがある
- 傷のようなものがあり、化膿している
- 触ってもよく分からないが、猫が胸~お腹の一部を気にしてしきりになめている
こんな症状が見られたら、すぐに病院へ連れて行ってください。
この病気に関しては、「様子見をする」という時間的猶予は一切ないと思ったほうがよいです。
1日でも早い受診が、猫の命を救うことにつながると心得ましょう。
もし、しこりや傷があった場合は、あまりその部分を強く押したり、揉んだりしてはいけません。
ガン細胞を広げて転移させてしまうおそれがあるので、いじりすぎないように注意してください。
乳腺腫瘍の発症リスクを、90%以上も減らす方法!
とっても怖い乳腺腫瘍ですが、メス猫が生涯にわたって乳腺腫瘍を発症するリスクをなんと90%も減らす方法があります。
それは「生後6カ月以内に避妊手術を行うこと」です。
猫の乳腺腫瘍は、性ホルモンとの関連性が高い病気です。
メス猫は生後6か月を過ぎた頃から初めての発情期を迎えるようになります。
ですから生まれてから一度も発情期を迎えないうちに避妊手術をして子宮と卵巣を切除することで、その後乳腺症にかかる確率が大幅に減ることが海外の研究結果として報告されています。
「Association between Ovarihysterectomy and Feline Mammary Carcinoma」
内容抜粋:308症例に関して獣医師にアンケート調査を実施した結果、全体の58%の獣医が回答した。
その結果、避妊を実施していない猫の発症率が高い事が確認された。
しかし、6ヶ月齢前に避妊手術を受けた猫は受けていない猫に比べて、乳腺癌に発展するリスクは91%減少している事が判明した。1歳迄に避妊手術を実施した猫の発症率は86%の減少であった。
※リンク先は海外の論文なので英語です。翻訳してお読み下さい。
うちのメス猫もちょうど生後6カ月を迎えた冬に、一度も発情しない状態で避妊手術を行いました。
メスの子猫を飼っている方これから飼う予定のある方でいずれ避妊手術をさせるのであれば、「生後6カ月以内」という大切なタイミングを逃さないよう、早めの計画と準備をお勧めします。
愛玩動物飼養管理士の資格を保有し野良猫の去勢・避妊手術や、
子猫の保護・譲渡などのボランティア活動に従事しています。
日本臨床獣医学フォーラムには毎年参加しており、日本中の著名な獣医師や、動物行動学の先生から直接レクチャーを受講しています。
この記事へのコメントはありません。