ヘモプラズマ症は、以前はヘモバルトネラ症、または猫伝染性貧血と呼ばていました。
なぜなら、リケッチア性病原体の「ヘモバルトネラ・フェリス」が原因とされてきたからです。
しかし詳しく遺伝子研究がされた結果、マイコプラズマの一種であることが判明し、ヘモバルトネラからヘモプラズマに呼び名が変わりました。ですから、呼び名が違うだけで全て同じ病気だと知っておきましょう。
この記事ではは貧血を主症状とする「猫のヘモプラズマ」について説明します。
この記事の目次
猫の貧血の原因
猫の貧血の原因は大きく以下の5つに分かれます。
疾患が原因
- 猫白血病
- 腎臓疾患
- 糖尿病
- 自己免疫性の貧血
- 悪性リンパ腫
- ビン酸キナーゼ欠損症などの遺伝性疾患など
感染が原因
- 猫エイズ
- 猫パルボウィルス
- マイコプラズマなど
誤食が原因
- 玉ねぎ
- ニラなど
寄生虫が原因
- マダニ
- ヘモプラズマなど
化学物質が原因
- ナフタリンなど
怪我が原因
- ケンカ
- 落下
- 交通事故など
その貧血はヘモプラズマ!?ヘモプラズマ特有の症状
猫が貧血を発症している場合、以下のような症状がみられます。
- 元気がない
- 食欲がない
- あまり動かない
- 耳の中
- 肉球や歯茎が白や黄色に変色する
- 血尿もしくは、真っ黄色な尿が出る
さらに病院でで詳しく調べると、黄疸、脱水、脾臓の腫れ、発熱なども確認されます。
では「ヘモプラズマ」に特異な初期症状はあるのでしょうか?
実はヘモプラズマに特異的な大きな特徴はなく、上記の一般的な貧血の症状と同じです。
ノミ・ダニに注意!ヘモプラズマの原因
ヘモプラズマの原因は猫同士のケンカなどの直接感染と、母子感染のに加えて、ノミ・ダニがヘモプラズマ病原体を運ぶことが重要な原因の一つだと分かっています。
猫がヘモプラズマを持ったノミ・ダニに噛まれると、ヘモプラズマ病原菌は猫の体に侵入し、赤血球の表面に取り付きます。
それを異物とみなした猫の体は正常な赤血球を次々と破壊し「球状赤血球」という若い赤血球が血液中に増えます。成熟した赤血球がどんどん破壊されてしまうため、骨髄が若い赤血球を作り出しているからです。この状態を「再生性貧血」といい、赤血球は作られているが壊されてしまう状態です。
ヘモプラズマは通常「再生性貧血」ですが、別に疾患があったり猫白血病に侵されていた場合は、「非再生性貧血」といって体が血を作れないタイプの貧血になってしまうこともあります。
一旦ヘモプラズマに感染してしまうとキャリアとなり、一生涯、体からヘモプラズマを退治することは出来ません。
ヘモプラズマの確定診断の方法
以下3つの条件が当てはまる場合にヘモプラズマを疑います。
- 血液検査で再生性の貧血と診断されている事。
- 腫瘍の影やしこりがない事。
- 糖尿病などの貧血を引き起こす他の疾患がない事。
ヘモプラズマが疑われる場合、FeLV(猫白血病ウイルス)と、FIV(猫免疫不全ウイルス)にかかっているかを調べる必要があります。なぜならこの二つの病気にかかっていると、免疫機能が落ちるためヘモプラズマを発症しやすいからです。
そして同時に、採血し標本を作ります。0.3〜0.8μmの寄生体が赤血球の表面に点々とついているのが顕微鏡で確認できればヘモプラズマの疑いが強くなります。
しかし、この検査方法では、ヘモプラズマが赤血球に出入りして隠れ、一回の検査では見つからないことや、ヘモプラズマなのかゴミなのかわからないなどの難点もあります。
ですから、近年では精度の高い遺伝子検査が普及してきています。
現在では国内及び海外の検査機関でほぼ正確にヘモプラズマの有無や感染株の種類までわかります。
猫に感染するマイコプラズマにはMhf、CMt、CMhmの3種類の株があることが確認されました。
Mhf>CMt>CMhmの順で病原性が強くなります。
この三つの株は遺伝子配列がそれぞれ異なるため、複数の株を遺伝子検査で同時に検出することができます。1匹の猫に3種類ものヘモプラズマが感染している例もあります。
ヘモプラズマの予防方法
残念ながら、現在ヘモプラズマ感染を確実に阻止する薬やワクチンはありません。ですから、完全室内飼いの徹底、ダニやノミを徹底的に駆除するなどで予防することがとても大切です。
ヘモブラズマ対策にオススメのノミ・ダニ予防薬- レボリューション(ノミ・ノミの卵・ミミダニ・フィラリア・回虫を駆除)
- フロントラインプラス(ノミ・ノミの卵、ノミのサナギ・マダニ・ハジラミを駆除)
猫の肩甲骨の間に垂らしてなじませるだけで効果は1ヶ月続きます。
もしダニやノミを猫の体に発見した時は駆除薬を使い、寝床は徹底的に洗濯をして燻煙式殺虫剤を使ってください。なお、ノミ取りシャンプーとノミダニ駆除薬を併用する事でほぼ100%のノミダニを駆除出来ます。
去勢や避妊の徹底
メス猫には避妊、オス猫には去勢をして外に出さなければ、喧嘩の傷などからの感染経路を断つことができるとされています。
最低でも週に一度外出する猫ではヘモプラズマ陽性率は26.4%でした。
ヘモプラズマの治療
通常遺伝子検査は外注なので1週間かかります。
ヘモプラズマなのか疑わしい酷い貧血の場合は、検査結果を待たずに貧血の治療に入ることがあります。
遺伝子検査でヘモプラズマに感染していることがわかった場合は、まずヘモプラズマに効く抗生物質を投与します。
ビブラマイシンなどが使われます。
たいていは1週間ほど続けます。一度打つと2週間効果が持続するコンベニアという抗生物質の注射を打つこともあります。
次にステロイドを使います。
赤血球を破壊する免疫システムを抑える作用があるので溶血を止める効果があります。猫の溶血性貧血にはプレドニゾロンが使われます。
猫はステロイドに強いので、副作用の心配はほとんどありません。プレドニゾロンよりも強力なデキサメタゾンも、猫には有効です。
他には造血ホルモンの注射や鉄剤のシロップ状のサプリメントを投与します。造血ホルモンとは腎臓の作るエリスロポエチンというホルモンで、骨髄に赤血球を作るよう指令を出します。
ヘモプラズマに使われる抗生物質
ビブラマイシンとは、テトラサイクリン系の抗生物質です。
ヘモプラズマにはテトラサイクリン系抗生物質がよく効くので多く使われていますが、1日3回投与しなくてはならず、発熱することもあります。
また、ドキシサイクリンという薬もよく使われます。こちらは投薬が1日1〜2回で済みます。副作用は胃腸障害や食堂狭窄です。飲ませる時に必ず水を多めに流し込むことが必要です。また、味が悪いので猫は吐き出したりよだれで流し出したりするため工夫が必要です。錠剤で出されることが多く、もしうまく飲ませられない場合は、薬を包む空のカプセルを購入して使用する方法もあります。餌に埋め込んでもいいでしょう。
どうしても飲ませられない場合は、注射で代用することも可能です。
その他には、フルオロキノロン(エンロフロキサシン)という抗菌薬も有効で、ドキシサイクリン以上の効果を示すという報告もあり、今後広く普及していくと思われます。副作用は視力障害です。シクロスポリン(免疫抑制剤)との併用はできません。
これらの抗生物質はヘモプラズマによく聞くので、3週間ほどで回復する猫も多いです。
病状が進むと「免疫介在性溶血性貧血」を併発する場合があります。血液塗抹検査で球状赤血球が確認できます。その場合プレドニゾロンの投与を検討します。輸血を検討する場合もあります。供血猫を飼っている病院に相談してみてください。
最後に
ヘモプラズマはノミ・ダニの駆除、適切な抗生物質を使用することで十分な延命が期待できる感染症です。早期発見が大事です。ささいな貧血の兆候を見逃さないでください。おかしいと思ったら、すぐに血液検査することを勧めます。
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趣味は猫首輪作り、パズル誌、音楽と映画です。
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