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マラセチア皮膚炎とは
マラセチア皮膚炎とはマラセチア酵母菌が大量に繁殖することによって起こる皮膚疾患です。
このマラセチア酵母菌とはカビ(真菌)の一種で、健康なわんちゃんの皮膚にも常に住んでいる常在菌です。日頃はなんの悪さもしていない菌なのですが、皮膚のバリア機能が低下してしまった時に、このマラセチアが異常に繁殖してしまい皮膚に悪さをしてしまいます。
マラセチア皮膚炎にかかると、口の周り、耳の内側、わき、内股、指の間、お腹、肛門周りといった場所に症状が現れます。
マラセチア皮膚炎の症状
マラセチア皮膚炎にかかってしまうと様々な症状を引き起こしますが、まず特徴的なのがニオイです。マラセチア皮膚炎になると独特な酵母臭がするためすぐにわかります。
酵母臭といってもわかりにくいかもしれませんが、ツーンとするような、嗅いだ時にモワンとくるようなニオイです。
その他の症状として、痒み、肌のベタつき、フケ、炎症、赤班、脱毛、落屑(皮膚がポロポロ剥がれる状態)といった症状が見られます。
マラセチア皮膚炎の原因
マラセチア皮膚炎になる原因は、皮膚のバリア機能が低下することによってマラセチア酵母菌が異常に繁殖することでマラセチア皮膚炎になります。
この皮膚のバリア機能が低下する原因として、アトピー性皮膚炎やアレルギー性皮膚炎、脂漏症の悪化、シャンプー後のドライヤー不十分による半乾きの状態などがあります。
また、内的要因としてストレスや病気などでわんちゃん自身の免疫力が低下している時などは、マラセチアが繁殖しやすくなりマラセチア皮膚炎にかかってしまうこともあります。
マラセチア皮膚炎の治療
マラセチア皮膚炎の治療には抗真菌剤を使用します。
そして治療法には内服治療とシャンプー療法の2種類あります。
内服薬での治療は主に『イトラコナゾール』を使用し、シャンプー療法では『マラセブシャンプー』が使われます。
どちらも抗真菌作用によって増えすぎたマラセチアを殺菌・減少させることで、皮膚で異常に増えたマラセチアを抑え正常な皮膚に戻していきます。
内服薬は1日に1回体重によって決められた容量を食後に内服し、シャンプー療法は1日1回1週間に2回マラセブシャンプーで洗浄します。
シャンプー療法で注意して欲しいのは、1回目のシャンプーから次のシャンプーまでは3日以上空けて使用することです。
シャンプーというと美容的な意識が強いかも知れませんが、ここでのシャンプー治療とは薬浴になるので、いわば薬剤治療しているのと同じ状態です。
ですから、必要以上に洗いすぎたりすると、逆に肌の状態を悪化させてしまうので、必ず用法容量は守ることが大事です。
愛犬がマラセチア皮膚炎にかかったときは??
私の実家にいる愛犬がマラセチア皮膚炎にかかってしまい、現在治療中です。
犬種はミニチュアダックスフントで、もともとアトピー性皮膚炎や膿皮症といった肌トラブルを起こしやすい子でした。
実家から「皮膚が臭う」「なんかベタベタする」「肌が赤くなってる」「痒みで眠れない気がする」と連絡が来ていたので、症状からしてマラセチア皮膚炎になっちゃってるかも?と思いながら実家に行くと、やはり愛犬の皮膚からは典型的なツーンとした発酵臭がしていました。
動物病院へ診察に連れて行くと、マラセチア皮膚炎と別で細菌性皮膚炎も引き起こしているとのことだったのでマラセチア皮膚炎の治療にイトラコナゾールをもらい、同時にビクタスS錠で肌の免疫力を低下させている細菌の治療もすることになりました。
同時にシャンプーをして皮膚を清潔に保つこともしてあげた方よかったので、マラセブシャンプーでシャンプー治療も一緒にすることにしました。
マラセブシャンプーでの薬浴は1週間に2回を目安に定期的に行ないます。
自宅でのケアができる方法なので、3日に1回の週2回で薬浴をすることにしました。
マラセブシャンプーの使い方は以下のようになります。
マラセブシャンプーの使い方
手順1. 30~35度程度のぬるま湯でしっかり皮膚を洗う
熱いお湯で洗ってしまうと肌に刺激を与えてしまい、
乾燥や痒みに繋がるので必ずぬるま湯で洗ってあげましょう。
手順2. マラセブシャンプーを泡立てて患部または全身を洗い10分浸け置きする
(実家の犬はほぼ全身マラセチア皮膚炎だったので全身洗いました)
ポイント1
また、患部に直接原液をかけて泡立てるよりも、泡立ててから使った方が洗い流すときも楽ですし、原液が肌に残ってすすぎ残しがでてしまう心配もありません。
ポイント2
2度目のシャンプーで成分を浸透させるために10分置きましょう。
また、洗う際には爪を立てないように指の腹を使ってマッサージするように優しく洗いましょう。
手順3. 10分経ったら綺麗に洗い流す
洗い流す際には、上から下に、頭からしっぽに、といった感じで順番に洗い流すことで洗い残しを防ぐことができます。
また、ざっと流すのではなく最低でも5分以上はしっかり流すようにしましょう。
リンスは必要?
しかし、マラセブシャンプーの香りが気になってしまうようであれば香り付け程度に薄くリンスをしてあげてもいいですが、成分によっては肌が敏感になっていることもあるので使うなら敏感肌でも使えるようなものだと安心だと思います。
手順4. 優しくタオルドライをする
ここで大事なのはゴシゴシ力を入れて拭かないことです。
あくまで優しく水分を吸収するようなイメージで優しくタオルドライをしましょう。
特に今はお肌がダメージを受けている状態なので、ゴシゴシ拭いてしまうと肌を傷付けてしまい痒みや傷といった悪化の原因になってしまうので気を付けましょう。ここでのポイントは優しく拭きながらもタオルドライをしっかりすること。
タオルドライの段階で、しつこいくらい水分を拭き取ってあげることで、ドライヤーの時間を一気に短縮することができます。
オススメする意識としては、「乾かす手段がタオルしかない」と思いながらタオルドライすると、「ドライヤーであとは乾かすからほどほどでいい」といった油断がなくなります。
手順5. ドライヤーでしっかり乾かす
一番大変な作業なため、ついつい手を抜きがちなドライヤーですが、ここでしっかり乾かしてあげないと半乾き状態となり、その湿気が原因で菌が繁殖してしまうのでしっかり乾かしてあげましょう。
タオルドライをしっかりしていれば、ドライヤーを当てた時に比較的早く乾いてくれます。
また、乾かす際にはスリッカーブラシやコームでブラッシングしながら、空気を全体に行き渡らせるようなイメージで乾かしていくと、ただドライヤーを当てるだけや手を使って乾かすよりも早く綺麗に乾かすことができます。
マラセブシャンプーの薬浴はトリミングサロンでも出来る
以上のような手順でマラセブシャンプーを使って薬浴をしてあげることで、効果的にマラセチアを殺菌することができます。
ですが、なかなか自宅で洗うのが難しいといった方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そういった時には動物病院でのトリミングを利用しましょう。
動物病院で獣医師による診断と処方によって薬用シャンプーは使うことができます。
ですので、当然トリミングも行なっている動物病院でしたら薬浴をしてもらうことは可能です。
自分の子用に処方してもらったマラセブシャンプーを持参して使ってもらうか、そこの病院で用意してあるのであればそちらを使ってもらうか、動物病院のシステムによって違うと思うので確認してみましょう。
もし、日頃動物病院ではなくペットショップやサロンを利用しているのであれば、マラセブシャンプーを持参して洗ってもらうといいでしょう。
ですが、個人的にはあまりペットショップやサロンでの薬浴はお勧めしません。
なぜなら動物病院での経験があるトリマーや、薬浴セミナーなどを積極的に受けて知識と経験があるといったトリマー、またお店自体がそういったコンセプトで動いていない限り薬浴についての知識が薄いことがあるからです。
もちろん、全てのペットショップやサロンのトリマーが当てはまるわけではありませんが、動物病院で日頃から『治療』として経験を積んでいるのと、時々飼い主さんが持参して行なうのとでは違います。
そういったことから、治療の間は動物病院でのトリミングを利用して、治療が終わったら行きつけの美容室を利用するといった方法を取ることをおススメします。
マラセチア皮膚炎を再発させない予防方法
マラセチア皮膚炎が完治したあとは、今後できるだけマラセチア皮膚炎にならないために出来る限りの予防をしてあげることも大事です。予防としては、
- 定期的にシャンプーをして皮膚を清潔に保つ。
- 皮膚疾患の改善・予防に作られたフードを与える。
- 長毛種であれば毛を短くカットして通気性をよくし、湿度や皮脂を溜めにくくしてあげる。
といった予防手段があります。肌がもともと弱い子やアトピーといった皮膚疾患を起こしやすい体質なのであれば、日頃のシャンプー剤も皮膚に優しいシャンプーを使って洗ってあげることで、皮膚情態を清潔に保ちながら、同時に皮膚を保湿するので肌トラブルを予防出来ます。
皮膚疾患用に作られた食事は皮膚の免疫力を上げさまざまな刺激から、皮膚を守ってくれるように作られているため身体の内側から予防することができます。
トリマーが勧める!マラセチア皮膚炎対策ヘアカット
そして、シーズー・マルチーズ・ダックスフント・チワワ・コッカースパニエルなどの犬種は、マラセチア皮膚炎を発症しやすい犬種でもあるので、皮膚の状態に合わせてトリミングをしてあげることが大事です。
もし皮膚が正常であれば毛を長く伸ばしてオシャレを楽しんでもいいかも知れませんが、もとから皮脂の分泌が多く皮膚が弱いということであれば、できるだけ短くしてあげて通気性をよくしてあげるといいでしょう。
また、トリミングをしてもらう際にも全身カットをするなら、皮膚が弱いのであればバリカンでのトリミングは避けましょう。
正常な皮膚でもバリカンを当てる事で、バリカン負けを引き起こし炎症を起こしてしまうことがあります。
ですので、皮膚が弱い状態であるならバリカンの使用は避け、ハサミでできるだけカットしてもらうことで皮膚への負担をなくすことができます。
マラセチア皮膚炎になると、愛犬が痒がる姿を見るのも辛いですし、マラセチアのニオイで飼い主さん自身も大変かと思います。
飼い主さんとわんちゃんができるだけ快適に過ごすことができるためにも、少しでも予防できるように、そして早めの対処で症状が軽くで済むように日頃からケアしてあげましょう。
約10年間動物病院でトリマー兼看護士として勤務。
トリミングセミナーや動物看護セミナーに積極的に参加し、
トリミングや看護業務と同時に、飼い主様へ飼育管理指導を行なってきました。
自宅でできる簡単なケアの仕方や、病気になってしまったときのペットとの向き合い方など
少しでも飼い主様とペットが幸せでいられるお手伝いができればと思います。
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