先日、とても衰弱した子猫を保護しました。
家の庭で子猫が倒れており動かないので「死んでいる?!」と思ってよく見ると、まだ息がありました。抱きかかえるとガリガリに痩せていて、骨のゴツゴツした感触が手に伝わってきました。
意識不明で、生死をさまよっている状態なのが明らかでした。
この記事の目次
通院と健康状態の把握
すぐに病院に連れて行き、その時点でできる処置と健康状態の確認をしてもらいました。
- 性別: 男の子
- 月例: 永久歯が生えかけていることから、生後4か月くらい
- 体重: 800g(生後4カ月の平均体重は1.95㎏なので、平均の半分もない状態)
- 体温: 未測定だが、触ってみて明らかに低い。確実に保温が必要。
- 下痢: なし
- 嘔吐: なし
- 検便: 寄生虫、卵、見られず
- 猫エイズ・白血病ウィルス検査: ともに感染なし
- 白血球: やや多い
- ヘマトクリット: やや少ない、貧血ぎみ
生きるか死ぬか危ない状態とのことで、取り急ぎインターフェロンを入れた補液を皮下注射してもらいました。
パルボウィルスの検査もしようか迷いましたが、その時点で下痢・嘔吐がないことと、白血球が減っていない(むしろやや多い)ことから、おそらく感染はないと思い検査しませんでした。
補液後、意識が少しハッキリとし、ヒルズの療法食「a/d缶」を温めて少し口に入れてやると、なんとか少しだけ食べはじめました。
獣医さんには、「この状態だと、食餌よりも保温のほうを優先で」と言われ、この日は帰宅しました。
突然の下痢
その後2日間は、意識が戻ったり朦朧としたり、あまり安定しない容体でした。
それでも、しっかり保温を続けると食欲が出たのか、a/d缶を食べる量が徐々に増え、動きも出て少しだけ回復の兆しが見え始めました。
しかし突然、下痢が始まってしまったのです。半日ほど様子を見ていましたが止まる気配がないので、再度病院へ。
2回目の通院
- 体重: 810g
- 体温: 未測定だが、触ってみてまだ低いのが分かる
- 下痢: ひどい泥状便。診察台の上でも、ダラダラと出てしまった。
- 嘔吐: なし
- 検便: 寄生虫、卵、見られず、便の内容物そのものは悪くない
2回目の通院で再度体重を量りましたが、ほとんど増えていません。
下痢も激しく、食べたa/d缶が未消化で出てきてしまっているような状態でした。
獣医さんには「飢餓状態から急に栄養価が高く脂分の多いa/d缶を食べて、消化器の機能が追い付かずに下痢をしている」と言われました。消化器の動きを正常に戻してやらないと、いくら食べても栄養を吸収できません。
この日は半日の日帰り入院をし、胃腸の機能を助けるための点滴を行いました。
「MCTパウダー」サプリメントを処方されました
点滴後、やや調子が良くなったようで動きが少し活発になりました。
そしてこの日は、整腸剤と一緒に食事に混ぜて与えるタイプのサプリメントを処方してもらいました。MCTパウダーというもので、白いきめ細かい粉状です。
MCTとは「中鎖脂肪酸」のことで、ココナッツ油やパーム油に多く含まれる成分です。
このパウダーは、機能低下により消化がうまくできなくても、素早く栄養素を体に吸収させることができるそうです。
このパウダーをフードに混ぜて与えたところ、2回目の通院から2日後、骨と皮で目玉が飛び出たように見えていたお顔が、少しだけふっくらとして顔色も良くなってきました。
点滴の効果もあって下痢も止まり、既に命の危機は脱したと思われる状態まで回復しました。
このMCTパウダーについて調べてみたところ、正式名称を「PT MCTパウダー」といい、株式会社ペティエンスメディカルという会社から販売されています。サプリメントなのでネットでも購入できますし、動物病院でも取り扱っている所が多いようです。
犬猫の両方に使えますので、消化機能が低下していたり、衰弱していて早急な栄養吸収が必要な場合には試してみる価値があると思います。
愛玩動物飼養管理士の資格を保有し野良猫の去勢・避妊手術や、
子猫の保護・譲渡などのボランティア活動に従事しています。
日本臨床獣医学フォーラムには毎年参加しており、日本中の著名な獣医師や、動物行動学の先生から直接レクチャーを受講しています。
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