犬皮膚病の3大原因とは?症状や治療法を動物看護師が詳しく説明

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わんちゃんを飼っている方にはとても身近であり、実は長期的な治療を必要とする皮膚疾患。

毛が抜け落ち赤みを帯びた身体を痒がったり、

舐めている我が子を見ているのはとても辛い事と思います。

ひとえに皮膚病といっても何らかの要因から二次的、三次的に発症しているケースもあり、確定診断がつくまでに様々な検査や多種多様な治療を行う等長い時間を要する事も多くあります。

命に関わる疾患ではないと思われがちの皮膚疾患ですが内分泌の異常から発症している事もありますし、何より何度も繰り返す、なかなか改善しない、愛犬が苦しんでいる等、治療の先に光が見えず頭を抱える飼い主様は非常に多くいらっしゃいます。

そのような中で大切なことは皮膚疾患への正しい理解と対処の仕方をしっかりと把握することです。今の生活の中でほんの一歩でもお互いのストレスを軽減するために出来る事はないか改めて見直してみませんか?

今回は特に多く見られる皮膚疾患についてお話しします。少しでも参考になれば幸いです♪

目次

 

マラセチア性皮膚炎

マラセチア性皮膚炎の原因

マラセチア性皮膚炎はその名の通り[マラセチア]という酵母、いわゆるカビの一種である菌が増殖することで引き起こされる皮膚炎です。

マラセチアは常在菌で健康な犬の皮膚にもごくごく自然に存在している菌です。

この菌は皮脂を好んでエサにするため環境因子や体質等の理由で皮脂が増えてしまった時や、

糖尿病や甲状腺異常、アレルギー等何らかの基礎疾患があり、犬の免疫力が低下してくると皮膚上に増殖してしまいます。

そのためスタンダードな治療で反応がない場合には基礎疾患を突き止める精査が必要です

 

マラセチア性皮膚炎の好発犬種

マラセチア性皮膚炎には好発犬種があります。断トツで多いのがシーズーです。その他ウエストハイランドホワイトテリア、スムースダックス、マルチーズ、パグ、フレンチブルドック、ボストンテリア等、室内犬が多くあげられます。

マラセチア性皮膚炎はどの犬種も患う可能性がありますが、好発犬種といわれる犬の飼い主さん方は特に通気性の良い生活環境や定期的なトリミング、体質に合ったフードチョイスを心がけることで発症を防ぐことができるかもしれませんね。

 

マラセチア性皮膚炎の症状

前述したとおりマラセチアは皮脂を好むため皮脂腺の集中している脇下、指間、耳、ソケイ部、肛門周囲等に増殖しやすいのが特徴です。

マラセチアが多く発生してくると発酵したような酸っぱい独特な臭いを発するようになり、赤みや痒みを伴う他、皮膚や被毛にベタベタとした脂っぽさが認められるようになります。

症状が進行し重篤になると皮膚の肥厚や色素沈着が現れてきます。

 

マラセチア性皮膚炎の診断・治療

マラセチア性皮膚炎の診断には先ず皮膚組織を採取し顕微鏡でどのような菌が出ているかの確認をします。皮膚スタンプ検査といわれる検査でスライドガラスを皮膚に押し付ける、もしくはセロハンテープをペタペタと患部に貼り付けて菌を採取し染色する方法で痛みは伴いません。

おおよそ検査費用2000円〜3000円前後かと思います。

顕微鏡検査にてマラセチアが確認できた場合には内服薬として、カビをたたいてくれる抗真菌薬(ケトコナゾール・イトラコナゾール)、菌の増殖を防ぎ炎症を抑える抗生剤(セファクリア・ラリキシン・パセトシン・アモキクリア・バイトリル・エンロフロキサシン)炎症が抗生剤のみで抑えきれない時や痒みが強い時はステロイド(プレドニゾロン・プレドニン)を処方していきます。

ただし基礎疾患を持っている犬にはステロイドが使えない場合もありますのでかかりつけの先生とよくご相談されてください。

マラセブシャンプー

内服に合わせ高い治療効果を発揮するのが〔シャンプー〕です。といっても一般のシャンプーではなく薬用シャンプーを使用した薬浴です。個人的にはスタンダードなノルバサンシャンプーよりもより殺菌作用が強いマラセブシャンプーがおすすめです。

症状によって3日に1回から2週間に1回薬浴を行います。頻度は皮膚の状態を見つつ決めていきます。もちろんやりすぎてしまうと皮膚のバリア機能を削り症状にも悪影響が出ますので慎重に見極めていきましょう。

ご自宅でのシャンプーは飼い主様のご負担にはなりますが劇的な反応も期待できます。

なお薬用シャンプーは普通のシャンプー剤より泡立ちや香りはよくないのが通常です。

シャンプーを行う際には全身をぬるま湯(体温と同等の37~38度)でぬらしシャンプーで全身を洗った後5~10分おいた後洗い流す方法が良いとされています。

マラセチア性皮膚炎は根気よく治療する必要があります。1ヶ月以上かかることもあります。

1週間、2週間で治療をやめてしまう方もいらっしゃいますが繰り返しを防ぐためにもしっかりとした完治を目指しましょう。

 

アトピー性皮膚炎(アレルギー性皮膚炎)

アレルギー性皮膚炎

アトピー性皮膚炎の原因

犬のアレルギー性皮膚炎、アトピーともいわれるこの疾患は特定の物質<アレルゲン>に対し個体が持つ自己免疫が過剰に反応することで引き起こされます。

それも、それまでは平気だったものに対し突然アレルギー反応を起こすこともあります。

人間の花粉症と同じように、蓄積されたアレルゲンが許容範囲のコップに貯まりきり、あふれ出した時にアレルギー反応が起きてしまうのです。

ペットに多いアレルゲンとしては、小麦、花粉、ダニ、ハウスダスト、卵や牛乳、豚肉や牛肉、鶏肉といった動物性タンパク等があげられます。

 

アトピー性皮膚炎の好発犬種

アトピー性皮膚炎は遺伝的、先天的要因が大きいといわれており国内での好発犬種はシーズー、フレンチブルドック、ビーグル、ウエストハイランドホワイトテリア、トイプードル、ラブラドール、柴犬、スムースコートダックス、ボストンテリア等室内犬が多くあげられます。

柴犬のアトピーは中々治療に反応せずコントロールが難しいように感じています。

 

アトピー性皮膚炎の症状

アトピー性皮膚炎の発症部位はマラセチア性皮膚炎同様、ソケイ部や脇下、肛門周囲が多くその他には結膜、マズル、耳介や下腹部等に症状が見られます。

代表的な症状としては激しい痒みや皮膚の乾燥、二次的なマラセチア性皮膚炎や膿皮症、外耳炎等があげられ、長期にわたると皮膚が肥厚しぶあつくガサガサになっていきます。

二次的な皮膚症状が出ている事が多いため<アトピー性皮膚炎>という確定診断に至るまで時間を要してしまうケースが多いのが現状です。

 

アレルギー性皮膚炎の診断

ではアトピー性皮膚炎はどのように識別、診断するのでしょうか。

まず最初は二次的に引き起こされた皮膚症状を抑え除外することが必要です。

そのために皮膚スタンプや皮膚スクレーピングを行いマラセチアや真菌、寄生虫がいないかのチェックを行い、それらが確認できた際にはそちらの治療から行います。

こちらの検査はそれぞれ2000円〜3000円程と思います。

次に行うのは血液検査です。

3ミリリットル程の血液を抜き何に対しアレルギーを持っているのかを見ることができます。

おおよそ30~35項目ほどでハウスダストやノミダニ、牛肉や豚肉、鶏肉等アレルギーを起こしやすい代表的なアレルゲンは一通り含まれています。

採血後は血液を外部の検査センターに出し1~2週間ほどで結果が出ます。

以前に比べアレルギー検査を行う会社さんが増えたため価格も下がってきていますが、やはり1.5~3万円程はかかってしまうためややお高めな検査となります。

しかし一括で反応アレルゲンが見れる事や、スピードを考えれば十分行うメリットはあるかと思います。

なおアトピー性皮膚炎は甲状腺ホルモン低下症を併発し、それが悪化の要因になっていることもあるため、この採血時に甲状腺ホルモンの検査を同時に行う事が多いです。

更にもう一つ、食物アレルギーを疑う場合には全てのアレルゲンを除外した「除去食」を二か月間使用し皮膚に反応があるかを試します。代表的なフードとしてはロイヤルカナンのアミノペプチドフォーミュラがあげられます。なお除去食療法の期間中はこのフードとお水以外は一切あげることはできません。

以上のような検査を行い総合的アレルギー性皮膚炎か否かの診断を行います。

 

アトピー性皮膚炎の治療方法

内服薬

アトピー性皮膚炎と診断がついた場合や疑いがある場合、まず内服のお薬を始めていきます。代表的なものはステロイド剤(プレドニン・プレドニゾロン)です。

副作用を懸念され使用を躊躇される飼い主様もいらっしゃいますが特に皮膚の痒みがある時は最初にステロイド剤で痒みを一気に抑え、徐々に量を減らしていく服用方法がおすすめです。

なお、ステロイド剤だけではなく抗ヒスタミン剤やその他の治療薬と併用していく方法が一般的です。

ただし副腎疾患や糖尿病等の基礎疾患がある犬の場合には悪影響を及ぼしかねないためステロイドを使用するのか、使用する場合はその処方量の細心の注意が必要となるため、かかりつけの先生とよくご相談されてくださいね。

次に使用されるのが【シクロスポリン】といわれる免疫抑制剤です。アレルゲンに対し過剰に反応してしまう自己免疫をコントロールするお薬です。

以前はネオーラル等の人体用で高価なものしかありませんでしたが現在は動物用としてアトピカ、アトピカのジェネリック品であるアトペックスやシクロフィル等が出ており選択肢も広がっています。

しかしながら安価なステロイド剤に対し免疫抑制のお薬はまだまだ高価であり最低でも1ヶ月で1~2万円程のお薬代がかかるケースがほとんどです。

ある程度の期間服用しなければ効果が明確にならないためオーナー様の負担が大きくなってしまうことがデメリットと言えます。

またごくごく最近に【アポキル錠】という新しいアトピー性皮膚炎用のお薬が発売されました。ステロイドに代わるもので、ステロイドと同等のスピードで効果を確認できる上に副作用がないというお薬です。

数ヶ月前から実際に使用していますが長年皮膚炎に悩んでいたことが嘘のようです。といったお声を頂戴しています。実感としてかなりの割合で皮膚に良い反応があるように思います。が、なかなか反応がないといったわんちゃんも2割ほどはいらっしゃいました。

また金銭的にもステロイドに比べれば高価なお薬となってしまいますが、短期間で反応の有無を判断できるため試す価値はあるかと思います。

それ以外の内服薬として併発している皮膚炎によって、抗生剤や抗真菌薬、甲状腺疾患をへいはつしている場合には甲状腺薬を使用していきます。

 

お注射

内服薬以外の治療方法としてもう一つ有効な治療法が、お注射です。

体内の免疫バランスを整え症状を緩和する【インターフェロン】を注射する方法。

こちらは副作用がなく、より根本的な部分の治療を行えることがメリットです。

反対に週3回の注射が必要な点や、効果が出るまでに1ヶ月以上かかる事、やや高価であることがデメリットな治療方法です。

そしてもう一つ、抗原をあえて体内に入れていき、免疫反応を起こしにくくしていく<減感作療法>という方法。

近年【アレルミューン】という新しい薬剤が出たため従来より安全かつ短期間で治療が行えるようになりました。

低濃度から高濃度の計6段階の注射薬を濃度が低い順に週1回のペースで打っていきます。

現在まだ治療途中の犬がほとんどなので実体験はなんともいえませんが痒みが引いてきた、毎日の薬から解放されたといったお声を頂戴しています。

またアトピーに悩みながらも減感作療法に手を出せずにいた飼い主様には選択肢が増えたこと喜びでもあるように感じています。

 

その他の治療方法

その他で使用するものはまずサプリメントです。

基本的に補助的なものであり劇的な効果を発揮するものはありませんが個人的にぜひおすすめしたいのが【アンチノール】です。皮膚専用のサプリメントではありませんが、皮膚や関節、被毛等多くの部位に効果があった!と多くのお声を頂いているので余裕があれば2ヶ月ほど試して頂きたいなと思います。

そしてもう一つ、大切な治療方法が<シャンプー>です。

皮膚の状態によってシャンプー剤のチョイスは変わりますが皮膚が乾燥しバリア機能が落ちている時は【ビルバゾイル・ヒュミラック】、二次性の皮膚炎があるときには【マラセブ・ノルバサン】がおすすめです。

シャンプーの頻度はかかりつけの先生とご相談されてくださいね☆

アトピー性皮膚炎は長期的な治療と、様々な試行錯誤が必要です。

ですが必ず緩和する方法はあるはずです。諦めずうまく付き合っていけるよう頑張りましょう!

 

寄生虫が引き起こす皮膚疾患

犬の寄生虫

家族として家の中で生活する愛する我が子の身体に虫がついていると聞くと身の毛もよだつ思いでしょうが意外と多いのがこの寄生虫による皮膚疾患です。

今回は特に多く見られるものをご紹介いたします。

 

ノミ性皮膚炎

前述したアレルギー性皮膚炎に付随しますが、ノミに刺されれば痒みを催し、本人が引っかいたり舐めたりすることで皮膚炎を発症します。

更にノミの体液や体の一部に対しアレルギー反応が起こるとノミアレルギーへと悪化してしまいます。ノミ寄生している場合肉眼でもノミ糞を確認することができます。気がついたらすぐに病院にかかられてください。

抗生剤やステロイドで皮膚炎の治療をスタートするとともにノミの駆除を行いましょう。

ノミ駆除薬の代表格はフロントラインプラスレボリューションですが皮膚の炎症が強い場合には経口タイプのネクスガードがおすすめです。

また再感染予防としてノミダニ対策シャンプーであるプロポリスワンの使用等も良いかと思います。

 

疥癬

疥癬とはダニによって引き起こされる皮膚疾患で、ダニの種類によりにきびダニ症、毛包虫症、アカラス等と呼ばれます。ダニが皮膚にトンネルを作りそこに寄生、繁殖を繰り返していくために猛烈な痒みや脱毛を伴います。

治療としては皮膚におきている炎症を抑える内服薬と合わせダニカットと呼ばれる薬剤を全身の毛穴に直接染み込ませていく薬浴法、更にイベルメクチンという注射薬を使用した治療方法があります。

もちろんフロントラインプラス等の外用薬も使用します。

この寄生虫はかなり根強く完治するまで数ヶ月かかるケースもあります。

【2017年1月追記→1錠でニキビダニ(アラカス)を駆除するブラベクト錠が発売されました】

最後に

いかがでしたか?

同じように見える皮膚病も要因は様々です。個人的にも皮膚病は頭を悩ませる疾患の一つです。

ですが完全に治すことはできなくても必ずうまく付き合っていく方法は見つかります。

現在も新しい薬剤や治療方法がどんどん出てきているジャンルですから、決して諦めずに疾患と向き合っていきましょう。

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木村 二美動物病院の看護師

投稿者プロフィール

5年間24時間365日体制の動物病院にて勤務していました。

現在は、より患者様との距離が近い個人の動物病院にて勤務しながら、

これまで経験を多くの人々に伝える為、記事の執筆活動などにも力を入れています。

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